ヴァイオリンの上達と基礎 ランボルギーニに学ぶ、練習が報われない本当の理由

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ヴァイオリンの上達と基礎 ランボルギーニに学ぶ、練習が報われない本当の理由

 西麻布の教室の近くには、この写真のような、ランボルギーニやマクラーレンが並ぶ

 ショールームがあります。その研ぎ澄まされた流線型を見るたびに思います。

 

 ランボルギーニの乗り心地は、決して「快適」ではありません。

 硬いサスペンション、轟音を上げるエンジン、神経を研ぎ澄ませる操作性。

 快適さを求めるなら、高級セダンに乗るべきでしょう。

 しかし、正しく扱えば、他のどんな車でも得られない圧倒的な走行性能と、

 心を震わせる刺激的な体験ができる。それがランボルギーニです

 

 ところが、この高性能マシンを正しく扱う方法は、驚くほどられていません。

 

 もし、誰かがこのランボルギーニに乗り込み、サイドブレーキを引いたまま、

 アクセルを全開にして走り出したとしたら、どうなるでしょうか。

 マシンが悲鳴を上げ、故障の原因になります。まともに走れるわけがありません。

 

 ヴァイオリンもこれと似ています。

 

 ヴァイオリンは、楽に音が出せる楽器ではありません。

 正しい基礎を身につけるには、時間も努力も必要です

 しかし、正しく扱えば、他のどんな楽器でも得られない響きと美しさがある。

 それがヴァイオリンです

 

 しかし、熱心に練習しているにもかかわらず、気づかないうちにサイドブレーキを

 引いたまま、アクセルを全開にしてしまっている。ヴァイオリンの世界では、実は

 このようなことが、毎日、世界中で起きています。これては本来の実力も存分に発揮

 できず、一生懸命にり組んでいるからこそ、非常にもったいないことなのです

 

 もしも今、ヴァイオリンで「きれいな音が出せない」「思うように弾けない」と

 悩んでいるなら、それは練習が足りないわけではなく、単に「ボタンの掛け違い」

 のような現象が起きているだけなのかもしれません。

 

 ここで立ち止まって、ボタンの掛け違いに気づき正しい方法に修正できれば、

 霧が晴れるようにそれまでの悩みが解決し、スムーズに弾けるようになれるのです

 

ヴァイオリンのサイドブレーキ――弦の振動を妨げる右手

 このサイドブレーキとは、具体的には何を指しているのでしょうか。

 

 ヴァイオリンの弦は、左右だけでなく上下にも振動しています。この上下左右の振動

 こそが、美しい音を生み出す源ですところが右手の力が過剰なせいで、この

 上下の振動を押さえ込んでしまっている方をたくさん見かけます。

 

 本来、弓は自重だけが弓毛に加わり、それが弦に伝わること基礎とします。

 そのため、右手の圧力は、弓先と弓元、あるいは奏法上の必要に応じて多少加減する

 だけの範囲に留めるだけでよいのです

 

 「弓が弦上を勝手に往復しているところに手を添えさせてもらっている状態」

 これは、私がシェリング先生に直接師事した際にいただいた言葉です

 弦の振動を最大限活用し、楽器から美しい音を引き出すためには、右手は自然に

 前に出しただけの状態が理想で、日々の練習でその状態を目指して取り組むことが、

 美しい音への第一歩となります。

 ここで注意しなければならないのは、右手の手首は過剰に曲げないことです

 

 ところが、この右手に関して、口頭での指導、人形を吊るしたり、水の入ったペット

 ボトルを吊るしてまで「右肘を下げなさい」と教えられることがあるようです

 しかしそれでは右手と右腕に過剰な力が入ることになり、音が濁り、本来響き

 引き出すことはますます難しくなります。まさにサイドブレーキを引いたまま走って

 いるような状態です。それではエンジン(楽器)が本来持つ性能もあなたの実力も

 発揮されません。せっかくの努力が報われない方向に向いてしまうのです

 弦の上下振動を妨げないという本来奏法において求められるべき状態に照らすと、

 そうした指導は、例えば身長が180cm近くあるような大柄な人の場合を除いて、

 逆効果にしか働かないでしょう。

 

ハンドル操作の精度――ヴァイオリンにおける左手

 サイドブレーキと並んで、根本的に見過ごされている問題があります。

 それは、ハンドル(左指音程)の精度です

 

 例えば、ランボルギーニを限界まで走らせるドライバーは、ハンドルの角度を

 ミリ単位調整します。しかし、ヴァイオリンの世界では、「大体このあたり」

 という感覚で指を置いていることが少なくありません。

 

 ここで一つ、質問があります。

 

 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調。その印象的な冒頭の「シ」の音が

 何度弾いても思うように弾けない、と感じたことはありませんか?

 

 実は、ヴァイオリンの「シ」には5種類の音程があり、メンコンの冒頭の「シ」の音

 はこの5種類の中の一つとなります。複数ある音程の中から適切な音を選ぶこと

 あの可憐な「シ」の音が出せるのです

 

 「そんな馬鹿な。シはシでしょう?」もしそう思われたら、今習っている先生

 こう尋ねてみてください。

 「メンデルスゾーンのコンチェルト冒頭の『シ』は、5種類ある『シ』のうち、

 どれで弾けばいいのですか?」

 

 おそらく、ほとんどの先生音大教授であっても)が答えに窮するか、

 「考えすぎだ」と一蹴するでしょう。

 なぜなら、彼ら自身がヴァイオリン音程について、その違いを知らないからです

 

 ランボルギーニ(ヴァイオリン)は、その精密な操作(5種類の『シ』の使い分け)

 があって初めて、美しい性能を発揮します。そのこと気づかず、「1種類」だけと

 思ってしまうのは、高性能スポーツカーに乗って「右か左か」だけで運転している

 ようなもので、本来の真価が引き出せず、もったいないことなのです

 

カーナビを見ながら運転する――ヴァイオリン音程とは

 では、このような音程の種類や使い分けは、どうやって学べばよいのでしょうか。

 

 ほどの車の例えでいうなら、高速道路をカーナビの画面ばかりを見つめながら

 運転している状態。画面上では完璧なルートが表示されているかもしれませんが

 実際に目の前の道路を見なければ、周囲の状況も安全確認もできません。

 せっかくの高性能車なのに、その性能を活かすこともできないままです

 

 近年、自動運転支援システムは目覚ましい発展を遂げています。カメラとセンサーが

 周囲を認識し、AIが最適な操作を提案する。しかし、どれだけ技術が進歩しても、

 最終的な判断を下すのは人間ですそして最も重要なのは、「その運転が快適か、

 美しいか」を感じられるのも、人間だけだということです

 

 ヴァイオリンにも同じことが言えます。

 

 今では、ヴァイオリン音程チューナーで測っている方がほとんどでしょう。

 しかし、それはカーナビの画面ばかり見て運転するようなもので、針が示す

 数値は見えても、楽器が発する“響き”(実際の道路状況)は聴こえていません。

 

 ヴァイオリン正しい音程取るためには、楽器から出る音の“響き”を聴き分け、

 “響き”の凹凸の中から響く音を選び取るのが基本です

 

 ヴァイオリン正確音程は、その響きの中に必ず正解があります。指や手のなど

 を工夫するより、“響き”を聴き分ける耳を鍛えること大事なのです

 

 ピアノや電子チューナーなどは、ヴァイオリンの“響き”に基づいたものではないため

 それらでヴァイオリン正確音程取ることは不可能です

 ヴァイオリンの“響き”は、一流の機材を用いても収録ができないため、当然、

 チューナーなどでも捉えることはできません。

 

 仮に響きを解析できる機器があったとしても、音程の取り方習得していなければ、

 機器に盲従し続けることになり、結局は勘と経験で音程取るという状況からは

 抜け出せなくなります。どんなに機器が発達しても、最終的には自分の耳で“響き

 を聴き分け、自分自身がその美しさを感じ取らなければなりません。

 

 [関連記事] 『ヴァイオリンの音程の取り方

 

 ヴァイオリン本来の最も美しい音でヴァイオリンを演奏したいと思うなら、

 ヴァイオリンの音程の取り方を学び、自らの耳でその“響き”の中から正解を

 判別することが欠かせません。

 

不整備なメーターで走る――ヴァイオリンの弦長を整える

 見過ごされがちな問題は、まだあります。

 

 想像してみてください。スピードメーターが調整されていない車で高速道路を走る

 ことを。メーターは100km/hを示していても、実際は80km/hしか出て

 いない、或いは逆に120km/h出ている。

 これでは、どんなに運転技術があっても、適切な速度で走ることは不可能ですし、

 安全上も非常に問題があります。

 

 スピードメーターは、ヴァイオリンでいえば、楽器の弦長のようなものです。

 ヴァイオリンの弦長は、フルサイズの場合で330mmとなりますが、演奏の前には

 この寸法になっているか確認することが大切です。

 というのは、弦長が調整されていない楽器では、どんなに正確な場所に指を置いても

 音程は合わないからです。

 

 そして、弦長の調整は、楽器工房で一度やれば終わりというものではありません。

 楽器の状態は、弦を張り替えるたび、季節が変わるたびに微妙に変化します。

 だからこそ、毎回のレッスンで弦長を確認し、必要に応じて調整することで、

 最大限の練習効果につなげることができます。

 

 ところが、この「弦長を測る」という基本中の基本が、いつの間にか

 「楽器工房の仕事」として外注化され、誰も確認しなくなってしまいました。

 それは、調整されていないメーターを放置したまま、アクセルとハンドルを

 一生懸命操作し続けているようなもので、以前書いた「距離も決めずに

 100m走の練習をする」のと同じく、努力が報われない原因がここにもあります。

 

 [関連記事] 『距離も決めずに100m競争の練習をする?

 (楽器は、100m走のタイムを測るのに、105mのコースを走らされている)

 

 「音程悪い」「才能がない」と諦めてしまう前に、弦長を確認してみてください。

 ほんの少しのことで、音程が安定し、弾きやすくなることもあるのです。

 

 ちなみに、子ども用の分数サイズの楽器の場合、弦長は330mmにはなりません。

 サイズもフルサイズの楽器との内部容積の比率で決めてはいても曖昧なものです。

 しかし、子どもは大人より手指が小さい分、弦長の基準はより厳密であるべきです。

 もしお子さんがヴァイオリンを学ばれているなら、今習っている先生

 「その分数楽器の弦長はどのように規定されるのですか?」と尋ねてみてください。

 その質問に明確に答えられる先生なら、今後も順調に上達していけるでしょう。

 それほど、弦長がヴァイオリン演奏に与える影響は大きいのです。

 

寿命を迎えたタイヤで走り続ける――弦の寿命の判断方法

 さらに見過ごされている問題はまだあります。

 それは、譬えるなら、タイヤがすり減って寿命を迎えているのに、

 「まだ走れる」「半年経ってないから大丈夫」と使い続けている状態です。

 

 高性能スポーツカーでは、タイヤの状態が走りを決定的に左右します。プロ

 ドライバーは、タイヤの微妙な変化を感じ取り、適切なタイミングで交換します。

 なぜなら、タイヤのコンディションがマシンの性能を直接左右するからです。

 

 ヴァイオリンにおいても、弦の状態は演奏を左右します。

 適切なタイミングで弦を交換することは、楽器と奏者の実力を最大限に活かし、

 練習効果を最大限に発揮するためにも欠かせません。

 

 ところが、実際にはそれとは気づかずに、寿命を迎えた弦を使い続けていること

 少なくありません。弦の寿命には明確な判断方法があるのですが、その方法

 現代では知られなくなってきているようです。

 

 弦の寿命は「期間」や「見た目」でなく、明確な「判断基準(ハイポジションでの

 完全5度のズレ)」で見極めることができます。寿命を迎えた弦(劣化したタイヤ)

 では、どんなに高度な技術を使っても、本来の性能は発揮できず、間違った感覚を

 体に染み込ませる「逆トレーニング」になってしまうことさえあります。

 

 [関連記事] 『ヴァイオリンの弦の寿命

 (プロも知らない、弦が寿命を迎えた瞬間を見抜くたった一つのサインとは?)

 

 「見た目がまだ綺麗だから」「半年しか経ってないから」

 「演奏会(発表会)の前に替えればいい」など、弦の交換時期が曖昧だったなら、

 この機会に弦の寿命を確かめてみることをお勧めします。

 

なぜ伝えられなくなったのか?

 ここまで読んで、こう思われたかもしれません。

 

 「なぜ、これほど基礎的で重要ことを、誰も教えてくれないのか?」

 

 答えは、悲しいほど単純です

 ヴァイオリンの真髄である“響き”について、多くの指導者(音大教授を含めて)

 自身が、その伝承を受けられていないからです

 

 それには、“響き”の特殊な性質も関係しています。

 「“響き”は、その場で、生でかなければ絶対に伝わらない」ということです

 

 何人も集めてうグループレッスン、圧縮された音声データであるYouTube、

 オンライン。これらでは、空間を振動させる本来の“響き”は削ぎ落とされて

 しまいます。録音技術にこだわったあのカラヤンでさえ、実響きを完全には

 収録できなかったほどなのです

 

 時代の流れとともに、便利なネット動画や、効率重視の指導が広まるにつれ、

 「響き音程取る」という本来奏法は次第に影を潜め、今では多くの

 「響き音程取ること知らない先生ヴァイオリン指導にあたっている

 という、伝承の途絶えた状態が続いているのです。

 

 [関連記事] 『ヴァイオリンの基礎が学べない理由――なぜ音大教授も知らないのか

 

気づかないまま走り続けている

 これまで見てきたように、ヴァイオリンには欠かせない基礎があります。

 

 弓の自重だけで弦を鳴らす感覚

 「5種類のシ」のように複数あるヴァイオリン音程の取り方

 330mmというヴァイオリンの弦長

 寿命を迎えた弦の判断方法

 

 にもかかわらず、サイドブレーキを引き、調整されていないメーターを見ながら、

 寿命を迎えたタイヤで一生懸命走り続けている。

 そのような状態に気づいていない方が今、とても多いのです。

 

 私の教室には、音大生や、コンクールで入賞するような方でさえ、「基礎を習った

 ことがない」「先生が何も教えてくれない」と駆け込んでくることがあります。

 彼らは皆、高級車(良い楽器と情熱)を持っているのに、整備不良と誤った運転方法

 で本来の力を発揮できずにいました

 

 しかし、楽器を整え、ヴァイオリンの音程の取り方から始まる基本を学ぶにつれ、

 どなたも見違えるような美しい音で、短期間でも目覚ましい上達を遂げています

 

 もし、あなたが思うように弾けないと悩んでいるなら、それは練習不足や努力が

 足りないのではなく、ヴァイオリン本来奏法を伝えられる指導者に出会えて

 いなかっただけなのかもしれません。

 

霧が晴れたように、美しい音が鳴り響く未来へ

 ランボルギーニは快適ではありません。しかし、正しく扱えば、他では得られない

 走りを体験できます。

 ヴァイオリンも簡単ではありません。しかし、正しい基礎を身につければ、

 他のどんな楽器でも得られない、本来の美しい響きの世界が待っています。

 

 本来の取扱を学べば、自分でハンドルを握り、正しく運転できるように

 本来奏法学べば、自分の耳で響きを聴き、美しい音を生み出せるようになる。

 

 今まで誰も教えてくれなかった“響き”の世界。

 それは、ヴァイオリンの本当の美しさ。

 

 霧が晴れたように、自分の出したかった音が鳴りく。

 思い描いていた演奏ができる喜び。

 

 そのための場所が、ここにあります。

 

 インターネットや本で「情報」は得られても、「響き」だけは別。

 その場で空気の振動を共有しなければ、伝えることも学ぶことも難しいものです。

 

 教室のドアは、いつでも開いています。

 

 あなたの可能性を最大限に引き出し、美しい音で毎日を豊かに生きる経験を

 一緒に始めませんか。

 

 まずは、ヴァイオリン本来の“響き”の美しさを体感しにいらしてください。

 

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 この記事でお伝えした“響き”による音程の取り方、弦長330mmの調整、

 弦の寿命判断、そして運弓・ビブラート・ポジション移動など、

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