チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲 アウアー先生が初演を「演奏不可能」として断った本当の理由

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チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏といえば

 ハイフェッツの、この有名なデザインの録音が名盤とされています

 (右側に白い板で、収録のメンデルスゾーンとチャイコフスキーの横顔

  左側に木の板で、演奏者のハイフェッツの横顔)

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 私は後述の理由から、オイストラフの録音をよく聴きます。

 (このジャケットは、オイストラフが急逝した際の追悼盤のLPのもの)

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その最大の理由は

 第一楽章の主題を初めてオーケストラが斉奏する直前で

 本来はこのような音のところを

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 ハイフェッツはこう弾いていて

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 再度主題をオーケストラが斉奏する直前も

 本来はこのような音のところを

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 ハイフェッツはまた違うで演奏していることに違和感を覚えたからです

ではそれは

 ハイフェッツが勝手に作った音形なのか?といえば、そうではなく

 下掲の譜面からもわかるように

 かのレオポルト・アウアーが編曲した版で弾いていただけのことです。

 (上段:Original

  下段:Rev.L.Auer)

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

とはいえ

 オイストラフにしても

 第一楽章の下掲の箇所では緑色で示したように

 場所によっては拍ごとにオリジナルとアウアー版を取り交ぜて弾いています

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 第三楽章の下掲の箇所では緑色で示したように

 他の多くのヴァイオリニストと同様に、完全にアウアー版のみで演奏しています

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そして

 上掲で、オリジナルとアウアー版の違いを相互に示した楽譜は

 ロスタル先生による校訂譜で

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

(従来の表紙)                       

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

(現在の表紙 表紙のデザインが異なるだけで、中身は同じです

 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏の譜面として、既掲のように

 オリジナルとアウアー版を併記した楽譜は他にも出版されてはいますが、

 通常の運指や運弓のみならず、弓のどの箇所でどのように弾くのか等が書かれている

 ロスタル先生の校訂譜は、誰もが参照すべき楽譜だと言えます。

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

(この凡例は、ロスタル版のチャイコフスキーの楽譜に掲載されています

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

(この凡例は、ロスタル版の別の楽譜からのものです)         

にもかかわらず

 ロスタル先生の校訂譜を所持している音大生(音楽大学生)にも演奏者(プロ奏者)

 にも指導者ヴァイオリン先生)にも、これまで一人も会ったことがありません。

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

ということで登場した

 アウアー先生は、ハイフェッツミルシテインエルマンなどの奏者を輩出した

 世界的かつ歴史的な名教師であるとともに、当時ロシアでは一流の演奏者としても

 知られていました。

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

(レオポルト・アウアー 1845年6月7日 - 1930年7月15日)

そうしたなか

 この協奏は、アウアー先生に相談せずに作して献呈したことから

 チャイコフスキーがこのの初演をアウアー先生に依頼するも、「演奏不可能」と

 断られ、代わりに初演したブロツキーが、この作品に対する酷評にもめげずに

 その後もこの演奏し続けたことから、初演を断ったアウアー先生もやがては

 演奏するようになり、既掲の改訂版まで作るとともに、弟子たちにも指導を行い、

 この作品は今では名として知られるようになった…ということになっています

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

(ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 1840年5月7日 - 1893年11月6日)

けれども

 気づいてみれば、アウアー先生の高弟として知られたシフェルブラット先生が

 鷲見四郎先生を指導し、その指導法を見ていて名教師となった鷲見三郎先生

 その両先生に師事した私からすると、アウアー先生がチャイコフスキーの

 ヴァイオリン協奏曲の初演を断ったのは、相談も無しに作曲したからというような

 面子の問題などでは決してないと感じています

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

というのは

 既掲のようにヴァイオリンという楽器の特性を活かせていない部分について

 アウアー先生は各種の改訂を施していますが、それはあくまで表面的なことで、

 既掲以外でもヴァイオリンという楽器の特性を無視というより知らなかった箇所が

 多数散見されるので、「演奏不可能」と断ったのは、面子の問題からではなく

 そうした理由からだとわかるです

そして

 そのような箇所は、きちんとした説明とともに、では如何に演奏すべきか?という

 ことを踏まえたレッスンにより、ヴァイオリン演奏技術の安定と、ヴァイオリン

 ならではの魅力を両立させつつ、チャイコフスキーの作品の素晴らしさを表現できる

 ようにしなければなりません。

ところが

 特に最近のヴァイオリニスト達の演奏では、神童や天才と評されたり、なかには

 世界的な演奏者として知られた人であっても、必ずしもそうしたことを踏まえて

 いない録音や動画をみかけることがあり、これもまた冒頭既述のロスタル先生の版

 を知らず学んでいないのと同様に、私からすると驚くべきことです

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

ということ

 そのような箇所については、レッスンでその総てを説明していますが、ここでその

 総てを掲げると、あまりにも大量の説明が必要になるので、恐らくはアウアー先生

 その譜面をみて最初に「おいおい…」と突っ込みを入れたであろう(笑)最初

 決定的な箇所についてのみ、具体的に書いてみたいと思います

それは

 第一楽章で、独奏ヴァイオリンはまず単音で主題を奏で

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 その次には、クロマチック進行で盛り上がった先で、重音で主題を奏でますが

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 この部分こそは、アウアー先生なくとも、まだ小学生の時にこの譜面を初めて

 学んだ私でさえが「おいおい…」と突っ込みを入れたいと思った箇所です

具体的には

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 の部分は音程としては

 ただ単に半音階で音を並べていくのでもなければ

 ただ単に♯は高く、♭は低くということ音程を取っていくのでもなく

 赤い矢印で示した正しい音程奏でる美しい音が朗々と響くポイントである

 [](つぼ ツボ)で慎重に音を並べていった

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 (音符の位置を上下させてイメージを表現しています

 その到達点で現れるのが

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 だからです

ここで

 何が問題なのか気づいた方は、もうその時点で正しいヴァイオリン音程の取り方

 よくわかっている方てすが、残念ながら必ずしもそうではない人の方が多いが故に

 既述のアウアー先生が「演奏不可能」と言われたのは面子の問題というような誤解が

 生じてしまったのだと思います

それでは

 何が問題なのかを具体的に説明すると

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 (音符の位置を上下させてイメージを表現しています

 と来て

 メロディーとして華麗に奏でたい!と取るべき音程は、イメージで表現すると

 赤い矢印で示した音程なのです

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 (音符の位置を上下させてイメージを表現しています

 開放弦との重音で作されているため

 ハーモニーとして綺麗に響かせたい!と取るべき音程は、イメージで表現すると

 赤い矢印で示した音程ではなく

 青い矢印で示した音程で取らないといけないのです

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 (音符の位置を上下させてイメージを表現しています

このことから

 いよいよ盛り上がったぞ!それ~!!というところで

 独奏ヴァイオリンが既出の主題をもう一度“豪華絢爛”に弾く箇所として

 最初の主題提示の1オクターブ上で、単音として「華麗」に弾くためには

 よく響くポイントとしての[](つぼ ツボ)のなかから

 「華麗」に響くポイントとしての[](つぼ ツボ)の

 赤い矢印で示した音程で取って弾きたいのに

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

 (音符の位置を少し上げてイメージを表現しています

 開放弦との重音で書かれているため、重音との和音で「綺麗」に弾くためには

 よく響くポイントとしての[](つぼ ツボ)のなかから

 青い矢印で示した音程で取って弾くしかない

 (音符の位置を少し下げてイメージを表現しています

 と作されていることに対して、正しいヴァイオリンの音程の取り方を知っている

 ヴァイオリニストからすれば「おいおい…」と突っ込みたくなる箇所なのです

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

そして上掲は

 既述のようにアウアー先生その譜面をみて最初に「おいおい…」と突っ

 入れたであろう(笑)最初決定的な箇所についてのみ、具体的に説明したもので、

 こうした事例がの全編にわたって多数みられるのです

と書いたものの

 冒頭既述のようにロスタル先生の版を知らず学んでおらず…どころではなく

 あろうことか最近ではこうしたヴァイオリン正しい音程の取り方すら学んでいない

 人達が、上記のような音程の矛盾を考えることなくチャイコフスキーの協奏

 弾きまくっているのは、私からすればあり得ないことです

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 音程 音程の取り方 レッスン バイオリン 教室 アウアー 初演 演奏不可能

そうしたことから私は

 例えば上掲の「華麗」と「綺麗」が両立しない箇所に対しては、その問題をただ単に

 [重音](和音)と[単音](旋律)の音程の違いの指摘に終わらせるのではなく、

 『大体不適? 音程の取り方も知らずにバッハ/無伴奏を弾く無謀さ』でも書いた

 実際の演奏でその問題をどのように対処し解決するのか?という指導をしています。

そして

 私の所にレッスン受けに来られている音大生(音楽大学生)、演奏者(プロ奏者)

 指導者ヴァイオリン先生)の方まで「そういうことを教えてもらったこと

 なかった」と異口同音に言うのは、決して不勉強からではなく、上記のようなこと

 教えてくれる先生が居なかったことが、そのような状況を生んでしまっているのだと

 思います

そうしたなかで

 ヴァイオリン本来奏法学び演奏技術の安定を目指しつつ、単に

 [重音](和音)と

 [単音](旋律)の音程の違いにとどまらない実践的な問題解決法を習得し、

 作品の魅力とともにヴァイオリンの魅力も最大限に引き出す演奏をしてみたい方は、

 当教室レッスンをぜひ受けてみてください。

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